(余談) 「バベル」観た

GW中に「バベル」を鑑賞したので感想メモなどを少し。ご参考まで。
サイキック青年団関係者の受けはあまりよろしくない上に、Yahoo!ユーザレビューで一つ星の酷評がかなり目立っていたため正直不安視していたのだが、その割には意外に良い映画だったし退屈させられることもなかった。自分にとっては、少なくとも作品全体を「駄作」と決め付けるほどのネガティブな要素は無かった。ただし、これは好みの問題がどうしても付きまとうので、駄作だと評価する人を「理解が足りない」とか「読みが浅い」とか言って非難することもできないとは思う。要するに、少なからぬ一部(大半なのかどうかは不明だが)の日本人観客にとっては残念ながら快く受け入れられなかったようだ、というだけのことである。
以下、細部等気付いた点をネタバレにならぬ程度に記す:

  • 前置きその1。映画全体はどちらかと言うと暗いトーンなので、デート鑑賞には不向きと思われる。女性があまり好まないであろうエロあるいはグロ・シーンも散りばめられているのでなおさら注意されたし。
  • 前置きその2。菊地凛子さんの陰毛全開+フル・ヌードのシーンは騒ぐほどのものでなし(露出時間も短い)。これ目当てで見に行くと失望します(苦笑)。
  • ほんの些細なコミュニケーション不全がもたらす悲劇と、皮肉にもその悲劇が契機となりうるある種の和解が全体のテーマであると私は解釈した。「何がなんだかよく分からない」という感想が比較的多いみたいだが、そんなに言うほどチンプンカンプンな、煙に巻いた印象はなかったけどな。
  • アメリカ、メキシコ、モロッコそして日本にわたる同時並行ストーリーの描写(最近この手法が多いね)は、「コミュニケーション不全がもたらす悲劇は、日本のような高度消費社会の先進国であれモロッコのような素朴な発展途上国であれ、国や文化、文明の違いを問わない(あれっ、当たり前か)」ということを強調するための舞台設定であって、一部に不要論が根強い日本の物語は、私にはあれはあれで必然性があったと十分に感じられた。
  • ただし、この4ヶ国のエピソードを繋ぎ合わせている猟銃に関する理屈(日本が起点になっている)は頂けない。ネタバレになるから詳細は書かないが、強引というか、ちょっと現実にはありえないのですよ。幸いそれが露わになるのが一番最後の方の場面なので、上手いこと処理しよったな、と。
  • 個人的には、現地俳優さんの演技共々モロッコ・ロケはよくあれだけ撮れたなぁという印象。これだけでも見る価値はあると思う。最近拝見した僻地(?)ロケでは「ブラッド・ダイヤモンド」のアフリカ・ロケ(シエラ・レオーネ)と並ぶ秀逸な出来栄えと思われる。
  • 肝心な菊地凛子さんでありますが、聾唖者演技もさることながら、台詞らしい台詞がない中を顔の表情(+手話)だけであれだけの演技をされたことは素直に評価されてもよい。もっとも、アカデミー助演女優賞にノミネートされるほどに絶賛すべきかどうかまでは正直言って微妙。
  • 菊地凛子(のキャスティング)に難癖を付けるとすれば、ちょっと女子高生には見えないということか。ヌードになった際に映るお尻の形も妙に筋肉質で女子高生っぽくない(苦笑)。これは多分私が日本人だからこそ抱く違和感ではないかとは思うが。因みに彼女がフルヌードになったシーンには理由があることは私には十分に伝わったですよ(主として女性観客に不評を買っているようなきらいもあるけど決して脱ぎ損ではなかったと思う)。
  • 聾唖者の演技は、 実は菊地凛子よりも親友(チームメイト)役の人のほうが堂に入ってた。本物の聾唖者ではないと思うのだが。