(余談) 日本以外全部沈没

昨晩「日本沈没」、じゃなくて「日本以外全部沈没」を鑑賞する。日本人観衆(特に若い女性)はコメディ映画を嫌うという業界常識に違わず入りは悪かったです(苦笑)。
残念なことにやや期待外れ。全般にギャグの過激さ、突っ込み加減が足りない印象。お下品ネタがほとんど登場しない等遠慮しがちな傾向に加え、とにかくテンポが遅いのが最大の欠陥。個人的には失笑はすれども爆笑にまで至るような場面は全然なかった。一言で言えば、ナンセンス・コメディというよりも脱力系ドラマといった感じのまったりとした作品である。恐らく筒井康隆のパロディ小説をそのまま忠実に映画化したことによる限界が露呈してしまったのではないかと勘ぐったのだが(と言いつつ原作は読んでいないのであくまで想像)、映画用の脚本は原作から若干距離を置いてもう少し羽目を外し、暴れまくってもよかったのになぁ、と思う。
正直コメディとしては中途半端さを拭えないのだが、一方で細部に関しては見所もそれなりにある。そんないくつかを中心に感想メモ:

  • 雲霞のごとく登場する在日外タレの拙い日本語がまったり感に拍車を掛けているわけだが、これはまぁある種の天然ボケであって、笑いの観点からは非常に良い効果をもたらしている。というか、はっきり言って本作はほとんどそれで救われているようなもん。とりわけリチャード・ギア似(平野氏伝)の元ハリウッド・スター役の怪演は賞賛に値する(笑)。
  • 日本人俳優の中では寺田農演じるマッド・サイエンティスト風情の地球物理学者が秀逸の出来栄え。私の中では「うれしはずかし物語」(88年日活ロマンポルノ)以来の好演もとい怪演、アカデミー賞あげたい(笑)。それから首相役を演じたベテラン村野武範も存在感ありっ放し。お二人とも真面目にコメディを演っていること自体が可笑しい。小橋賢児若手俳優陣を完全に食っていた。
  • 端役で登場したイジリー岡田とつぶやきしろうが使い捨てになっているのは勿体無い。もうちょっと活かせる方法はなかったのか。特にイジリー岡田は一体何のために顔を出したのかさっぱり分からず。同様に防衛庁長官役の藤岡弘、も2シーンしか登場せず、ついぞ彼の武士道魂が爆裂することなく大団円を迎えてしまうとはなんとも不完全燃焼。ところで、藤岡さんの名前の後ろの「、」って一体何なの(苦笑)。
  • 実相寺氏が関与している割には特撮やCGのショボイことと言ったら(苦笑)。これも笑いを誘うために狙ってやったのか。もちろん予算制約がキツかったという理由もあるだろうが。
  • 日本列島のみが沈没せずに生き残った末、各国の日本に対する媚びへつらいと礼賛ムードがピークに達した状況下で途中唐突に挿入される「ニッポン音頭」のMTV的シーンは、ポカーンあるいはキョトーンとしながらもシュールで結構笑える。破顔一笑の日本国首相役村野武範があまりにも気味悪くて(笑)。後にDVD化されたら誰かがこのシーンだけ切り取りYouTubeにでもアップして世界中で話題に、なんてことはないか(苦笑)。

要するに1800円の価値は絶対ないと思うので(苦笑)、これから観に行かれる方はサービス・デーを狙って割引価格で入場されることをお勧めします。因みに私も一抹の不安があったので(笑)、レイト・ショーにて1200円で鑑賞した次第。
そうは言うものの、昨今の邦画界に蔓延している感動至上主義とやらに些か辟易している私個人としては、今後もこれに懲りず(?)、このようなおバカなコメディ/パロディ映画をどしどし制作してほしいと切に願うところである。