(余談) ピンク映画ヒストリー

昨日、一部で話題のドキュメンタリー映画ピンクリボン」を渋谷のUPLINKにて鑑賞する。
雑居ビルの2階、せいぜい40名程度のキャパ、観客は自分を含めてたったの4名(苦笑)。映画館というよりも自主上映会場と言うに相応しい小部屋。これほど映画館らしくない場所で映画を観るのは生まれて初めてだ(笑)。鑑賞後は同ビル1階に店舗を構える多国籍料理主体の小洒落たカフェ・レストラン(UPLINKの関連経営のよう)でランチ。映画の後で食事をどうしようかと人ごみ激しい渋谷の街をほっつき歩かなくて済んだのでこれには救われた。帰路、松涛の高級住宅街をふらついていたら、メタルブラックMercedes Benz SLR Maclaren に出くわし度肝を抜かれるというオチ付き。さすが都内の金満度は違う。
話を元に戻す。本作は、恐らく日本独特であろう低予算映画のアングラ文化であるピンク映画の歴史と今を、著名な歴代監督のインタビューを縦糸に、女池充監督の撮影現場密着取材を織り交ぜながら資料風にまとめたユニークなドキュメンタリー作品。背景情報は専用サイトに詳しいので(このサイトはロードショウ終了後も消去せずに残しておくべきだ)、これ以上ここで繰り返すことはしない。
以下、個人的な感想メモ:

  • 現在のピンク映画の主要顧客層は50〜60歳台のオヤジであるとのこと。これは、新規顧客開拓がまったく成功していないことを雄弁に物語っている。主因は改めて言うまでもなくAVの普及であるが、これに加えて最近は、一般映画における濡れ場シーンの過激化、言うなれば一般映画のピンク化もボディーブローのように効いているのではないかと思う。最近観たfemaleや、また「メノット」とか「さよなら みどりちゃん」(星野真里が体当たり演技)等の情報を聞き及ぶにつけ、予算潤沢な一般映画とマニアックなAVとの狭間で存在意義を失いつつある窮状を見て取れる。
  • 女性だけのピンク映画上映会をやったら大入り盛況だったとの逸話を聞くと、行為のみにフォーカスした即物的なAVには抵抗ある一方でエロというプロセスには興味津々な女性という潜在顧客を継続して掘り起こせなかったこと、逆にまだ掘り起こす余地が依然としてあるかもしれないことが分かる。吉行由実監督に期待。とは言うものの、小便臭そうな(苦笑)場末のピンク映画専門館に女性が足を踏み入れることなどまず無理だろう。となると、結局肝は流通形態。CS放送チャネルへの番組提供などの努力は個別に細々とあるようだが...。
  • 流通形態とも関連するが、低予算ジリ貧で窮地に陥りつつあるにも関わらず、デジタル化への取り組みが遅いのは本当に解せない。低予算だからこそデジタルで大逆転のチャンスがあろうものを、編集にも手間暇かかるフィルム撮影+専門館上映にいつまで拘泥しているのか不思議だ(まぁこれは映画界全般に言えることだが)。渡辺護監督が、故黒澤明監督の言葉を引用して「(状況が苦しくなったら)攻撃に転じろ」と発破掛けてたように、ネット配信等デジタル化で攻撃に転じ、その恩恵をもっと追求したら未来は幾分開けるだろうにと勝手に素人考えに浸る。だがその恩恵に預かる前に業界が消滅するかもしれんという淋しい現実もある(苦笑)。
  • そういう自分はピンク映画を一度も観たことがない。日活ロマンポルノは何本か観ましたが...。やっぱりあの薄汚い専門映画館は抵抗あるにゃぁ、それにモーホーの餌食になるという余禄が怖くて(笑)。手始めに、本作でも紹介されていた黒沢清監督作品の「神田川淫乱戦争」と「ドレミファ娘の血は騒ぐ」(こちらは一般作品)を観てみようか。前者はビデオを入手できるかどうかちょっと心細いけど。