(余談) 村西とおると「AV時代」

昨年末に幻冬舎アウトロー文庫より文庫化出版された「AV時代―村西とおるとその時代」を先頃読む。500ページに及ぶちょっとした大作だが、まるで歴史絵巻を眺めるが如く話が流れるように展開し、その上文章が読み易かったため、一気に読破する。たかがAV、されどAV、見事な時代証言だと感心させられる。
著者である本橋信宏氏自身が村西監督と長年仕事を共にしてきた当事者であり、AV勃興期の渦中にいたことも手伝い(男優出演もこなしている(苦笑))、リアルタイムの日記風な筆致によって話はかなり生々しく、バブル経済と重なる当時にタイムスリップさせるような感覚で村西監督が巻き起こした数々の喧騒へと読者を引き込んで行く。偶然に誕生した顔射シーン、黒木香の発掘延いては「黒木香」という社会現象、あきれるほどの逮捕拘留遍歴、松坂季美子と巨乳ブーム、イエローキャブ野田社長(当時)との意外な接点、京大生AV女優騒動とその顛末、Vシネマ進出への野望、出自に由来すると思しき飽くなき拡張主義路線とあっけない破綻等々が連綿と綴られるのを読むにつけ、村西監督という一人の強烈な個性、風雲児、いやセックス・テロリスト(苦笑)がAVというマス・マーケットの開拓に多大な貢献(?)を果たしたことを嫌が応にも理解させられる。また、日頃サイキックで竹内氏が薀蓄を垂れるエロシーン裏話の補強材料として結構勉強になりました(笑)。
本作は同著者による「裏本時代」の続編的な位置付けにあるようだが、個人的には、昨年鑑賞した「ピンクリボン」というピンク映画断面史の続編として、日本におけるポルノ現代通史の欠けていた最後のピースが揃ったなという感じを持った(と言っても単行本は8年前に出版されているわけだが...)。あまりに面白かったので、ドキュメンタリーにせよ脚色されたドラマにせよ、映画にしたらかなりイケるのではないかと妄想。Inside Deep Throat同様に海外でも受けるかもしれない。それほどまでに当時の村西監督の生き様が、時代の映し鏡のようでドラマチックでもあったという印象を深くした(リスキーだけど憧れますなぁ)。