(余談) NHK少子化問題特集雑感

先週末2日間にわたって放映された「日本の、これから - 人口減少社会 (NHK)」を観て少子化問題を少し真面目に考える。これは「汚れた舌」総括の続きである(笑)。
私は個人的に人口減少それ自体が声高に言うほどの大問題だとはまったく思わないし(長くなるから理由省略)、税制も含めて行政は個々人のライフスタイルに対して原則中立であるべきだと考えているので、やれ晩婚問題だ、少子化問題だ、と聞くたびに、「放っといたれよ」と内心舌打ちしている(苦笑)。
しかしながら一方で、子供を作りたいと切望するごく普通の家族が、経済上あるいは制度上その他様々な理由で容易に子供をもうけることができない、ハードルが高い社会というのも文字通り不自然であり、どこかしら歪んでいる、という意味においては社会全体が取り組まなければならない「問題」であるとは思う。以下、雑感メモ:

  • この問題の根底には、職住接近が叶わない長時間痛勤か高い家賃負担の二者択一を迫られる都市型通勤のライフスタイル、さらにその根っ子にある都市一極集中(もっとはっきり言えば東京一極集中)の弊害あるいは限界が横たわっているはずである。このことはパネリストの誰一人はっきりと指摘していなかった。辛うじて、水島議員が「少子化は広く日本人のライフスタイルの問題である」と力説されていたことと接点を持つ。
  • これをある意味で象徴していたように思えたのが29歳独身事務職女性社員の一例で、家賃やら社会保障費やらの固定支出を差っ引くと、月々の手取りがわずかに4万円にしかならない(含食費!!)という悲惨な現実を見せつけられる。このような生活状況では男女に限らず仕事と育児の両立を果たすなど拷問に等しい(NEET問題もこれと無関係ではないと思うんだが話が逸れるので割愛する)。「これでどうやって結婚して子供を産めっていうのか」と別の女性参加者が悲鳴にも似た発言をしていたが、誰しもまったく返す言葉がない。要するに少子化問題は、育児休業の取得推進といった小手先の、納得感の乏しい、極めて矮小化された解決策だけでは到底解消しえないという問題の根深さを痛感させられるのである。
  • 地方がサービス経済化(パネリスト堺屋氏言うところの「知価」社会への移行とでも言おうか)の波に乗り切れていない現状が透けて見えるのは私だけであろうか。つまり、時空を超越可能なこのインターネットの時代に(Skypeもあるしなぁ...)、本来ならばITとかバイオ、金融とか、知識や知恵が資本の世界的な高付加価値産業・企業が、オペレーションコストの安い地方でもっと勃興してもいいはずである。そこにうまく移行していければ、職住接近の豊かなライフスタイルに転換していけるであろうし、そうなれば仕事と子育ての両立に絡む諸々の障害もかなりの程度克服可能と思うのである。地価が安い地方であれば、例えば社内託児所の設置なども比較的容易ではないかと思うし。したがって行政が採用すべき根本的な施策とは、都市(東京)一極集中を解消して経済の分散化を誘導するような産業政策なり税制改革であったりする。それこそが少子化問題のbig pictureではないかと。
  • 国土の狭隘な日本じゃアメリカみたいには行かないとか言う人もいるだろうが、これを見たら考え変わるぞ(苦笑)。
  • 蛇足。番組ホームページの中身が薄くて資料価値がまったくないのはどういうことか。司会者三宅アナのプロフィールを大きく掲載しても意味ないやろ。ちょっとは英BBCを見習ってほしい。
  • 蛇足の蛇足。サイキック的に笑えたところ。とある年金受給夫婦が紹介された(スタジオ討論にも参加)。それがご両人とも年金貰っているもんだから二人合わせて月々40万円で、しかも豪華客船クルージングで豪遊三昧と来た(笑)。それだけなら夫婦揃って豊かな老後の一例ということでまだ許せる、「微笑ましい」で済んでいた。その後に対比例として上記29歳OLの悲惨な家計が飛び出したのである。スタジオ紛糾。結果は火を見るより明らかで、後は針の莚状態(苦笑)。NHKも意地悪やで、ほんまに。この夫婦は長年保険料を払った当然の対価を得ているだけで、なぁーんにもやましい所はないのであるが、こういう展開になるとは知らされていなかったんやろな(苦笑)。